11/6-7 2回目の八王子市特別支援教室ワークショップ

11/6-7に八王子市の特別支援教室で、2回目のコンピュータとプログラムで動く作品づくりのリモート授業(ワークショップ)を実施しました。今回も低学年と高学年に分けて、2時間ずつ計5回の授業を行いました。前回同様、低学年はプログラマブルバッテリー、高学年はPICO Cricket を使いました。2回目ということもあり、子どもたちがつくる作品も進化しています。また今回はモーターの動きを上下左右など様々な動きに変える仕組みのサンプルも追加しました。前回の作品を進化させようとする児童、新しく今回用意した仕組みを活かした作品づくりに取り組む児童など、子どもたちの作品づくりの様子はリモートで画面越しに見ていても、前回よりも動きが早く活発に感じられました。最近は出前ワークショップで2時間の体験だけで終わってしまうことが多かったのですが、2回目の大事さをあらためて考える機会になりました

全く新しいツールではなく、慣れたツールを使うことで、当然ですが作品づくりのアイデアも広がります。さらに、知っている、慣れているツールを使う安心感が、子どもたちの作品づくりそのものを安心できる活動にしているようにも思えました。


ツールに慣れた後で生まれるデジタルものづくりを通じた学びについて、ここで以前に行った実践を紹介できればと思います。

プログラミングをはじめ、コンピュータを活用したデジタルものづくりの授業やワークショップでは、プログラミングの知識や技術だけでなく、子どもたちに様々な学びが生まれます。それはワークショップのなかにいると毎回感じられます。それをどう評価したら良いのか、この実践ではその評価を試みてみました。

今から10年以上前にになりますが、当時奈良女子大学附属小学校の杉澤学先生と一緒に4年生を対象に実施したScratchとPICO Cricket を使った授業を行いました。この実践では児童が作った作品と作品についてまとめたレポートの分析から評価を試みました。

まずはビジュアル型(ブロック型)のプログラミングツールを使うことで、児童がつくった作品に順次、繰り返し分岐といった処理が含まれたプログラムをつくり使われていることが分かりました。

また児童の作品ポートフォリオからは、プログラミングに関することだけでなく、作品のデザインや仕組み、製作過程での他者との協働、自分自身の製作活動への向き合い方、身の回りにあるコンピュータとプログラムで動くものへの見方の変化など、それぞれの児童には、それぞれの多様な気づきがあったことが分かりました。

これらの授業のデザインで工夫したのは、活動目標の2段階デザインと活動の循環デザインです。活動目標の2段階デザインは、まずScratchとPICO Cricket といったツールの使い方を知る活動を参加する全児童の目標として設定し、授業の最初に取り組みます。その後の作品づくりでは、自分がつくりたい作品や興味にあわせて、自分で活動目標を設定します。具体的には、最初の数時間をツールを知って慣れるためのプログラミングや簡単な作品づくりを試す時間に使い、その後の時間は各自がつくりたい作品をどのようにつくっていくか活動の目標を立てて取り組みます。

もう一つは、活動循環のデザインです。上田(2005)のワークショップデザインモデル「つくって語って振り返る」やResnick(2007)のCreative Learning Spiral – imagine – create – play – share – reflect を学校授業向けにアレンジして実施しました。各授業のなかで、子どもたちは何をしたいのか目標と目当てを考え、活動して、その結果を振り返り、クラスで共有します。そして最後に次回に向けて活動の計画を考えます。

いずれも25時間を超える長い、長期に渡る授業実践でしたので、時間をかけて大きなサイクルをゆっくりとまわしていくものでした。次の授業までの間に、それぞれの児童への次回の支援をどのようにしていくか、教師側もゆっくりと考えられることも有益でした。

リモートでワークショップ実施することで、現場のように五感をすべて使った情報は得られませんが、その分視覚と聴覚情報に集中して現場で起きていることを把握しようとすることで、今まで見えなかった(あるいは見ていなかった)子どもたちの状況がみえた気がします。

その一つは、先ほどの活動の循環が、ものすごい速さで進んでいることです。「いいこと思いついた!」「先生みて!」「俺天才」という声が聞こえたと思ったら、もう次の活動に移っています。まさにあっという間に、「つくって語って振り返る」「imagine – create – play – share – reflect 」が起きています。

これはたまたま子どもが声を出しながら活動していたので、こちらも見ることができましたが、実は声には出さずに活動を循環させている子どもも多くいるはずです。さらに、実際の活動として現れていないので、これをどう評価するべきか考えなくてはなりませんが、頭の中で活動の循環が短い時間で、そして何度も起きていることも考えられます。思考の循環と言っても良いかもしれません。

と、今回のワークショップからも沢山の学びの機会をいただいたのですが、この瞬間的な活動の循環サイクルを学習者も教師もどう評価していくか、文字や言葉にするのではスピードが追いつかないのかもしれませんし、無理に振り返りの過程を入れることで循環を止めてしまうかもしれません。

子どもたちの「いいこと思いついた」「みてみて」、そしてその後の自信に満ちた笑顔は、私がワークショップの中で生まれてほしいと思い続けている場面です。瞬間的に突如起きるこの出来事を、場合によっては声や体の動きとしては現れない現象をどう記録するか、そしてどう評価するか、学びの場としてのワークショップの良さを伝えていくために、これからも考えていきたいと思います。

上田信行(2005)「経験のパブリッシング」『国立民族学博物館を活用した異文化理解教育のプログラム開発』国立民族学博物館調査報告

Resnick, M.(2007) Sowing the Seeds for a More Creative Society. Learning & Leading with Technology December/January 2007–08:18-22

 

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