プログラミング教育を日常の学習とどう繋げるか

昨年から、附属昭和小学校のプログラミング教育について先生方と検討をすすめています。

6年間でどのようなプログラミング教育をしていくか、カリキュラムの開発とともに、教員向けの研修会をしながら検討を進めています。

プログラミングを学ぶだけではなく、プログラミングを学習の道具の一つとして選んで使えるようになるらないか、様々な学校の先生方と一緒にカリキュラム開発をさせていただいたり、出前授業でうかがわせていただく際に考えています。

インターネットでの情報検索を学習に活かすように、スライドや文章作成を学習のまとめに使うように、プログラミングも子どもたちの日常の学習のなかで使えないかといつも思っています。どうしても、出前授業など特別な授業の機会だけのプログラミング学習にとどまってしまうことが、私自身の活動の課題になっています。そもそも、出前授業や外部からの支援としての学校への関わり方そのものが、学校での自立的なプログラミング教育を阻害していることも否めません。

そこで今回は、日常の学習のなかにプログラミングを取り入れることにも附属昭和小学校の先生方と取り組んでいます。

3年生では、Scratchの使い方を学んだ後に、算数の文章題をつくる課題のなかで活用してみました。問題を出して、入力した答えの正誤を判定して、答えにあわせたアクションでてくるデジタルドリルをつくりました。プログラムをつくることだけでなく、問題を考えること、回答に合わせたリアクションを考えること、そして自分で試して、誰かに問題を解いていくことで学んだ知識をプログラムで表現しながら、自分なりの算数の知識を新しく構成しているようにも見えました。この授業では、4年ゼミ生が卒業研究の一環として作成したプログラミングシートを使っていただきました。算数の発展課題として、3桁X2桁のかけ算を使う文章問題を自由につくるというテーマと、それ以前に子どもたちがScratchの使い方を学んでいて何ができるか知っていたこともあり、シートを使いながらScratchでそれぞれのデジタルドリルを作成しました。先生からScratchを使うという話を聞いた際の子どもたちの「やったー」という声から、日常の学習のなかで活用する可能性の一面が垣間見れた気がします。自由な問題をつくるという題材と、日頃の子ども達の自由で主体的な活動を大事にする先生の指導が、学生が作成したシートの可能性を広げていただいたのかもしれません。

 

1年生では、総合的な学習の時間で年間を通じて進めている「生き物(虫)」をテーマとした学習のなかで、虫ロボットづくりに取り組んでいます。まずは授業2時間を使って、プログラマバルバッテリーとモータ、ブロック、工作材料を使ったコンピュータで動く作品づくりに挑戦してもらいました。その後の授業では、自分が興味のある、関心のある虫ロボットづくりに挑戦しています。虫の動きを再現するための仕組みを考えたり、モータをコンピュータで制御しながらできた動きを、虫の動きに当てはめてみたり、虫の仕組みや外観に着目したり、子どもそれぞれのこだわりを、作品を通じて見ることができます。これは単に虫ロボットをつくろうという授業をするのではなく、1年間を通じて、虫について研究をしてきた子ども達の学習のなかで、新しいプログラマブルバッテリーというツールの使い方を知ってもらったからこそできる授業なのではないかと思っています。虫ロボットをつくることは、ロボット工学の専門家でも難しいことだと思います。しかし、子どもたちの様子を見ていると、そのロボットづくりへの向き合い方は、専門家と同じではないかとも感じます。自分で解決できない課題は、自分で試行錯誤をしてみて、周りの仲間の力を借りたり、インターネットや書籍で調べてみたり、そして大人の力を借りたりと問題解決のためにあらゆる手段を順番に使っていきます。担任の先生の「困ったときにどうするか」という指導もあり、学級が新しいアイデアを生み出す工房のようにも見えてきます。子どもたちそれぞれの課題を克服したときの「やったー」という歓声、「見てみて」という声、そして何より輝くような誇らしいような表情が(うまくいかなかったときの悲しい表情も)、とても印象的です。これも単なるプログラミングの体験としてだけではなく、日常の学習のなかに位置づけていただいたからこそ実現できたのだと思います。また、子どもたちそれぞれのロボットづくりの過程をロイロノートで提出された写真や動画、振り返りシートを丁寧に見ながら、次の時間のアドバイスを考えたり、場合によっては必要な材料を追加するために、担任の先生が沢山の時間を費やしていただいていることがあっての授業だとも感じています。

現場で、教室で子ども達や先生方と一緒に活動するなかでしか学べないことがあることをあらてめて実感しています。

貴重な機会をいただいている学校の先生方と子どもたちに感謝しています。

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