Programmable Battery(PB: プログラマブルバッテリー)は,モーターやLED、各種スイッチなどを接続することができ、コンピュータやタブレットを使わずに、本体のボタン操作だけで、モーターなどのオンとオフのパターンを記録して再生できるツールです。
10個のボタンでモーターなどをオンにするタイミングを設定します。
例えば、●(オン)○(オフ)だとすると、●●○○●●○●○●○ オンオンオフオフオンオンオフオンオフオンオフと10セブメントのパターンを繰り返しさ再生できます。
ボタン操作で電池をプログラムできたら、そんなアイデアからProgrammable Batteryは生まれました。
未就学児、小学生から大学生、大人まで多くの方々にワークショップを体験してもらっています。
どんな年齢でも、それぞれのアイデアや知識を活かせるコンピュータでちょびっとものづくりを楽しむツールです。
開発コンセプト
2020年度より小学校でのプログラミング教育が必修となりました。小学校でのプログラミング教育は、コンピュータの学校導入がはじまった1980年代にも盛んに実践されていましたが、その後、継続的な取り組みとはなりませんでした。当時利用されていたLogoやBasicなどは, プログラムをテキストで記述するため, 文法を間違わないように細心の注意を払う必要があったこと、またLogoの場合は所謂タートルグラフィックばかりが用いられ、児童の興味に偏りができてしまったことが継続的に利用されなかった一因であると考えられています(Resnick et al. 2009)。 また 教師にとっても活用方法が限定されてしまうことで、積極的な授業活用が拡がらなかったことも理由と考えられます。それから30年以上を経た2020年代の小学校プログラミング教育は, 今後の社会基盤を支えるであろうAIやIoTなど新しい技術に柔軟に対応できる人材を育成するとともに、プログラミング的思考やComputational Thinkingなど新たな思考力を育むことが目的とされています。
一方で Logoの開発者であるPapertらMITメディアラボを中心とした研究グループは、プログラミングを含むものづくりを通じた学びについて、コンストラクショニズム(Constructionism)として、次のようにまとめています(Kafai & Resnick 1996)。
学習者は,自ら振り返ることができて,他者と共有できる外的な人工物をつくることに積極的に関わっている際に,新しい知識をつくりだしやすい。それは,ロボットかもしれないし,詩や砂の城,コンピュータプログラムかもしれない
つまり,プログラミングは一つの手段であり, 個人にとって意味を見出せる人工物(Personally Meaningful Artifacts)としてものづくりに関わることが最も重要であるとしています。
デバッグはプログラミングと学びを結びつける最も強力な手段であり(Papert 1980), プログラミング的思考やComputational Thinkingを育む手段でもあります。うまくできなかったことから、 その原因を探し、 思い通りになるようになおしていくこと、そして何がうまくいかなかった原因であるかを理解することは 学び方の学びでもあります(MITの研究者らはLearning Learningとも表現します) 。コンピュータ上でのプログラミングは、 間違いをなおしていくためには条件を限定できる非常に優れた環境でもあります。しかし、広い意味での様々なものづくりのなかでもデバッグと同様に間違いをなおしていくこと、試行錯誤することを私たちは幼い頃からしています。
Programmable Batteryは、いつでもどこでも誰でも、自分の興味の持った材料で、ディジタルものづくりを楽しめることを目的に開発しました。コンピュータの操作やプログラミングに慣れていなくても、簡単にコンピュータを使った作品づくりができます。ちょびっと(少し)のテクノロジが大きなアイデアと学びを生むことを、幼い子どもたちを含めて多くの人に体験してほしいという願いも込められています。